明治時代
商業会議所条例の制定・公布
維新後の明治政府の国策は文明開化と殖産興業であったが、殖産興業を推進するには大きな障害が横たわっていた。それは貿易問題で、各国と結んだ不平等条約である。そこで欧米諸国の「チェンバー・オブ・コマース」(Chamber of Commerce)のような商工業者の民間団体がその国の経済界に高い地位をもたらしていることを知っていた渋沢栄一らは、まず条約改正交渉のため「東京商法会議所」を設立した。この組織はその後、政府によって改編され、行政上の協力機関としての「東京商工会」に移行させられた。 これに反発した経済界の指導者たちは諸外国の商業会議所制度を研究し、「商業会議所法草稿」を井上馨農商務大臣に提出、条約制定に努力した。その結果、商業会議所に法的根拠が与えられ、その性格が明確にされた法律第81号「商業会議所条例」ならびに「商業会議所条例施行規則」が制定・公布された。
八王子商工会議所の創設
八王子においては、当時、第三十六銀行の頭取・吉田忠右衛門を中心に関谷源兵衛・鈴木新七郎・指田三五郎・平林定兵衛・田代森蔵・鈴木信太郎・松本房次郎が発起人となって、明治27年(1894年)8月、八王子商業会議所を設立した。八王子商業会議所は「商業会議所条例」に基づいて申請・認可された、全国で41番目の商業会議所であり、関東地区では東京・栃木・宇都宮に次ぐものであった。
当初の事業は講演会・講習会の開催、商工業勤続従業員表彰等であったが、なかでも役場と協力して町内の電話架設工事の促進に尽力した。この貢献によって八王子商業会議所の電話番号は「2番」が与えられた(1番は八王子郵便局、3番は八王子役場)。
機業地として発展
八王子織物の起源は古く、遠く万葉の時代にさかのぼる。関が原の戦(慶長5年=1600年)の後、江戸の発展に伴って織物の需要が増すとともに、八王子織物も著しく増加、文政年間(1818~1830年)には高級品も生産され、次第に専業的な形態に発展していった。
明治15年頃から輸出が開始され、23年には機業家200戸・織機1,671台で、主要織物は、男女帯地・一楽織・糸織・斜子織・羽二重・黄八丈・ハンカチーフ地等であった。日清戦争以後は機械の導入と絹紡糸の使用によって、28年には西陣、桐生に次いで全国第3位の地位を確保、八王子は関東有数の機業地として脚光を浴びるようになった。そして明治の末には、全町どこへ行っても「筬(おさ)の音」が聞こえない所はなく、桐生・足利・伊勢崎のような大きな工場はないが、全町皆工場であった、といわれている。
六斎市の賑わい
八王子は滝山城・城下町時代以来、横山・八日・八幡の三宿で毎月4と8の日に市がたっていた。六斎市である。明治8年には、市場の区域と取扱品目(生糸・織物・古物・野菜果物・雑品・魚鳥獣の6種)が定められた。 絹綿織物を主とした織物市は、横山町3カ所と八日町2カ所で開催された。古着・古道具・日用品・雑貨・飲食物等が取引される雑品市は、横山町と八日町の約1kmの街路上に出店され、ないものはないといわれ、その賑わいは大変なものであった。
年表
- 明治11年(1878年)
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- 3月 東京商法会議所創立
- 4月 第三十六国立銀行営業開始
- 明治16年(1883年)
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- 10月 東京商法会議所、東京商工会に改称
- 明治22年(1889年)
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- 2月 大日本帝国憲法発布 8月 甲武鉄道、新宿~八王子間開通
- 4月 八王子町制施行(26年神奈川県から東京府に移管)
- 8月 甲武鉄道、新宿~八王子間開通
- 明治23年(1890年)
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- 4月 第3回内国勧業博覧会を上野公園にて開催
- 9月 商業会議所条例公布
- 明治24年(1891年)
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- 1月 東京商工会、東京商業会議所に改称
- 明治27年(1894年)
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- 8月 日清戦争始まる
- 8月 八王子商業会議所認可設立、初代会頭に吉田忠右衛門就任
- 明治28年(1895年)
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- 4月 八王子織物組合染色講習所を私立八王子織染学校と改称
- 明治29年(1896年)
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- 八王子撚糸製造業組合設立
- 明治30年(1897年)
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- 4月 八王子町に大火、3,341戸の家屋焼失
- 明治31年(1898年)
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- 3月 八王子貯蓄銀行認可
- 8月 豊田佐吉、動力織機の特許取得
- 明治32年(1899年)
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- 5月 八王子織物同業組合設立
- 10月 1府9県連合共進会、八王子で開催
- 明治33年(1900年)
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- 5月 第2代会頭に關谷源兵衛就任
- 明治35年(1902年)
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- 3月 商業会議所法公布
- 明治36年(1903年)
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- 3月 私立八王子織染学校は東京府に移管、東京府立織染学校と改称
- 6月 八王子電話局開設、八王子糸繭商組合創設
- 明治37年(1904年)
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- 32月 日露戦争始まる
- 4月 八王子電話局が廃止され、八王子郵便局が業務を継承
- 明治38年(1905年)
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- 第3代会頭に朝倉甚五郎就任
- 明治41年(1908年)
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- 5月 府立第四高等女学校設立
- 9月 横浜鉄道、東神奈川~八王子間開通
- 明治42年(1909年)
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- 4月 第4代会頭に中村宗三郎就任
- 明治43年(1910年)
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- 9月 京王電気軌道株式会社設立
- 明治44年(1911年)
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- 4月 第5代会頭に齋藤政吉就任