経済不況との狭間で

昭和初期

金融恐慌で始まった昭和

昭和2年、衆議院予算委員会における片岡蔵相の「東京渡辺銀行が破綻した」という失言が金融恐慌の導火線となり、その1カ月後には15の銀行が支払いに窮して休業を発表すると、全国的に取付け騒ぎが起こった。政府は緊急勅令によって3週間(5月12日まで)のモラトリアム(支払い猶予)を決定した。 全国商業会議所連合会の総会が急遽開催され、これらの一連の騒ぎで打撃を蒙った商工業者のため、各銀行に対して一般商工業者に金融の便宜を与えるよう各商業会議所が努力することを決めた。しかし、八王子商業会議所では、すでに市内の第三十六銀行と川崎銀行との話し合い、支払い猶予期間中の利率を解決していた。この敏速な処置に、全国の商業会議所は驚嘆したのであった。

不況克服のため積極的に活動

八王子商工会議所は、さまざまな事態に遭遇、激動の時代に生きる市内商工業者の立場にたって、種々の活動を展開した。例えば、銀行の土曜半休反対運動、中小商工業者向け融資制度改善運動、営業収益税減税運動、広告祭の開催、中小商工業者救済商工資金借入対策運動、電気料金値下げ運動、東電メートル制反対運動、商権擁護運動、観光八王子推進運動、店頭照明競技会の開催、商店街基本調査の実施、鉄道敷設促進運動等である。

市電
横山町通りに市電が走る(昭和初期)

金融恐慌の基因は、第1次世界大戦終了後の政府の経済政策の貧困によるものであり、商業会議所の任務も重要なものとなってきたが、従来の商業会議所法では限度があり、法改正が要望されていた。その声が新時代に適う「商工会議所法」の公布となった。この法改正によって、八王子商業会議所の名称も、八王子商工会議所と改称されたのである。

工業人口42%の八王子

「八王子市百年の大計のため〈産業立市〉を市是としたい。しかし、これを具現するには市民一人ひとりが精一杯働く覚悟が必要で、私も市当局も一意専心、これをモットーとしてことを処する覚悟である」。これは、城所國三郎市長(第5代)が市長就任後初の年頭所感で、商業会議所会頭時代の経験をもとに、不況時代を生き、経済的基盤を磐石にするため掲げたモットーであった。 この頃はすでに〈産業市立〉の下地はできていた。昭和4年の工業人口は全人口の42%を超えていたからである(商工業人口は全人口の73%)。しかし、ほとんどが個人経営の家内工業の域を脱していなかったが、市と商工会議所は協力して産業の振興を推進した。

商工会議所事務所の増改築

商工会議所事務所建物は年々狭くなり、昭和6年、増改築することになった。本町66番地の土地(143坪)の南側(道路側)に位置する事務所建物を北側(奥)に移築して旧館とし、南側に新館を新築したのである。

八王子織物同業組合結成記念
増改築した商工会議所会館(昭和7年)

新館の1階は玄関を入って右側に事務室・理事室・応接室・役員室・会頭室の5室、左側は全部小会議室、そして2階は300人収容の大会議室である。旧館は新聞記者室・図書室・集会室・小使室等に改築され、新館旧館合わせて10室を有する建物となった。総坪数は210坪(旧館70坪・新館140坪)、総工費3万円、落成したのは7年3月であった。 玄関の両脇には棕櫚の木が植えられた。これは高さ1尺(約30cm)につき2円で大小合わせて20本を120円で購入したといわれている。建物外観はクリーム色の明るい堂々とした洋式建築であったが、残念ながら、20年の空襲で焼失してしまった。

年表

昭和2年(1927年)
  • 1月 高尾電気鉄道(高尾登山鉄道)開通
  • 3月 金融恐慌始まる
  • 4月 商工会議所法公布、商業会議所法廃止
昭和3年(1928年)
  • 1月 八王子商業会議所、八王子商工会議所に移行
  • 4月 日本商工会議所設立
  • 5月 京王線、新宿~東八王子間直通運転
  • 12月 府立染織試験場開場
昭和4年(1929年)
  • 6月 第7代会頭に久保田惣右衛門就任
  • 5月 横山町通りのスズラン灯が完成、5日間の大売り出し
  • 10月 ニューヨーク株式大暴落、世界恐慌始まる
昭和5年(1930年)
  • 1月 金輸出解禁実施、金本位制に復帰
  • 10月 当会議所主催”広告祭”開催、八王子商店連盟を結成
昭和6年(1931年)
  • 4月 中央本線、浅川~甲府間電化完成
  • 9月 満州事変起こる
昭和7年(1932年)
  • 3月 当会議所新館落成  
  • 市内目抜き通りに百貨店進出
昭和9年(1934年)
  • 4月 八王子輸出織物工業組合設立
  • 10月 八高線、八王子~高崎間全線開通  
昭和11年(1936年)
  • 11月 商工組合中央金庫設立   
  • 当会議所、「中小商業相談所」設立
昭和12年(1937年)
  • 7月 日中戦争始まる
  • 8月 百貨店法公布
  • 9月 戦時統制三法
  • (軍需工業動員法・輸出入品等臨時措置法・臨時資金調整法)公布
昭和13年(1938年)
  • 2月 繊維工業設備に関する件公布
  • 4月 国家総動員法公布
  • 7月 市街電車、武蔵中央電車廃止
  • 10月 第8代会頭に秋葉定吉就任
昭和14年(1939年)
  • 1月 第9代会頭に城所荘蔵就任
  • 5月 当会議所に図書室設置
  • 9月 当会議所、「商工相談所」開設

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